notes

アラサー SNSのあいだ。

春の夢‐宮本輝

"良かった"の一言で終わらせたら何も得るものはないよなぁ特に私は。私、ほんとほっんとうに物覚えが悪く、大好きな本や漫画でもすっかり記憶が抜け落ちてしまうので悲しくなる。「私という運命について」を再読していて痛感した。こう、友達に貸すとなると確かめておきたくなるので読むのです。

春の夢 (文春文庫)
宮本輝は短編の名手と聞いていたけれど、読んでみた5冊のなかで断トツ好きな1冊になった。青春や少年青年の心の揺れとか心情をすごくピタリと表現してみせるところが好き。私の苦手分野だった「短編」「方言」の小説が克服できたのもこの作家さんを読んでからだと思う。
主人公哲之は亡き父の借金に追われ、母と別居生活を始める。住道のアパートで独り暮らしをする傍ら大阪のとあるホテルでベルボーイとして働く生活。それを支える恋人陽子とトカゲのキンちゃん。昭和の恋人同士って素敵やなぁ、恋は甘酸っぱいって誰がそんなこと言うたんやろなぁ、ええなぁって思う。なにより、男の子の心情ってこんな感じなんかなって曖昧ながらも烈々と感じた。しかし、昭和。今時の草食系とか聞いてると悲しくなる。自称草食系男子とかもうどーにかしてくれ、と思います。

クリップ1―父から哲之へのきざな遺言として言った言葉

人間には、勇気はあるけど辛抱が足らんというやつがいてる。希望だけで勇気のないやつがおる。勇気も希望にも誰にも負けんくらい持ってるくせに、すぐにあきらめてしまうやつもおる。辛抱ばっかりで人生何も挑戦せんままに終わってしまうやつも多い。勇気、希望、忍耐。この三つを抱き続けたやつだけが自分の山を登りきよる。どれひとつが欠けててもことは成就せんぞ。(pp.178)